18.流血コングラチュレーション

 「おめでとうございます!」

 

電話口の相手はテンション高くそう言った。

その時、僕の左耳からは血が流れていました

 

 

・・・・

 

 

 

高校生の時、どうしてもピアスを空けたかった

 

ちょっとワルへの憧れ(ヘタレなので不良ではない)

ピアスっていう大人へのステップ(と思っていた)

 

そりゃあもうハズキルーペ並みに

 

「世界が変わる!」というぐらいの意気込みだったものです。

 

 

そして高2の夏休みに

僕はピアッサーを買ったのでした

 

ピアッサーとは

自分でピアスを開ける機械のことで

 

フリスクみたいなサイズ感で

コの字型の空白部分に耳を挟んで

 

外側部分からホッチキスみたいな感じで

ガチャン!と挟むんです

 

まぁ結果からすると

激痛!まではないのですが

 

初めてとなると、なかなかドキドキするもんです。

 

一般的には耳たぶに穴を開けるでのですが

高校生の僕は何故か耳の上、つまり軟骨部分にどうしても開けたくて

 

そうなると余計怖いじゃないですか

耳たぶを軟骨を触り比べると明らかに硬さが違う

 

これ、大丈夫なのかな。。。。

 

蒸し暑い夏の日

脂汗をかきながらピアッサーを軟骨に挟むこと

 

数十分

 

・・・

 

ドキドキドキ

 

 

いや、もう知らんがな!

やってまえ!

 

 

「バチン!!」

 

 

ピアッサーは確かに音を立てました

何かが耳を通過しているようなしてないような

 

これで僕もピアスが!

 

 

と思ってピアッサーから手を離したんですが

あれ?ピアッサー耳から離れませんよ。。

 

ドユコト?

 

結論から言うと

軟骨を開けるのにはまだまだ力足らずで

 

もっと力いっぱいお挟みこまないといけないんです

 

 

今と違ってネットにポンッと情報があるわけでもないです。

そりゃもうパニックになりましてね

 

これ、このままピアッサーを挟みこんだままで

人生を過ごすのか!?

 

なんてそんな事ありえないんですけど

もうそんな思考回路です

 

なんとかしないと!と思って

ピアッサーの裏に書かれていた販売元

 

「はい。〇〇でございます」

 

「あ、もしもしピアッサーを購入したものなんですが・・」

 

 

事のなりゆきを説明します

 

「おそらくピアッサーのキャッチ(留め具)まで押し込む力が弱いかと」

 

「はぁ。じゃあもっと思いっきりですか?」

 

「はい。思い切りやって下さい!ガチャン!というまで。頑張って下さい!」

 

僕があまりにもキョドっているのが

電話口でも伝わったのでしょう。謎のエールまでいただきました

 

「えっとじゃあいきますよ!?」

 

 

「はい!頑張って!」

 

右耳で携帯を挟んで

ピアッサーで左耳を挟んで

 

いざ!

 

さっきよりも思いっきりの力で

ピアッサーを握り締めます

 

すると。。。

 

「ガチャン!」

 

ピアスのキャッチ部分がキチンとハマり

ピアッサーをするりと取れたのでした

 

「あっ。開きました!」

 

一人きりでピアスを開けていた恐怖感から解放され

僕にしてはテンション高めで返答したところ

 

 

「おめでとうございます!

これからもウチの商品をよろしくお願いします!」

 

オペレーターの方と謎の一体感が

生まれてフィナーレとなったのでした。

 

 

・・・・・

 

 

もうピアスの穴も閉じちゃいましたが

今でも軟骨を触るとあの日の記憶が蘇ります

 

 

 

あのオペレーターの方も

楽しく対応してくれて

 

ちょっとへんてこりんだけど

今でもいい思い出です